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第89回 御霊信仰と袋井17 祇園の杉の祠1

 

梅雨が明け、暑い夏が訪れる直前の7月第二週の土日には、各集落で祇園に代表される御霊会の神事や祭礼がくり広げられる。


8月は穀霊となった先祖霊が子孫の元に戻ってくる盆月であることから、仏壇や盆棚には、だいたい6月じゅうに収穫できる麦を加工したうどんや素麺が先祖霊の恵みとして供えられるわけだ。


この盆月を迎える前に、厄や災害の元凶と考えられた様々な御霊をもてなし、村内や街中を浄めておこうというのが祇園を代表とする御霊会である。


市内の遠州灘に面した旧幸浦地区に、東同笠・西同笠という集落がある。さて、この集落名「同笠」を皆さんは読めるだろうか?答えは「どうり」である。残念ながら地名の起源は伝わっておらず、「通り」の転化とされるものの、由来は不明である。このうち西同笠の鎮守、寄木神社境内には、毎年、祇園の祭として「津島様」と呼ばれる杉の祠を朝から作り替え、夜になると提灯をともして囃子を奏でる夜祭りが行われている。


祠の構造は、波打ち際の清らかな海砂を運び込んで方形の土台を作る。その上に四本の竹を柱として立て、竹を割った棒状の部材を井桁状に組んだ壁と屋根を設けて骨組みが完成する。この骨組みに青々とした杉の葉を隙間が無いように挿し、鋏で刈り込んで形を整えると、中心に新しい津島神の御札を入れて完成となる。


このような常緑樹で覆った仮設の祠を「オカリヤ(御仮屋)」と呼んでいる。西同笠は旧原野谷川流域の集落の一つで、隣接する太郎助集落でも、昭和60年頃まで杉で覆われた「オカリヤ」を作り、祇園の祭礼を行っていたが、現在は木造の祠となった。杉の葉で作る「祇園のオカリヤ」は近隣でも数カ所残っているので、しばらくはそれを探訪してみよう。(山)