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第59回 熊野信仰と袋井23 海の熊野と袋井

 

木原に所在する那智山長命寺の本尊は、紀州熊野三山を構成する那智山から伝来したと伝える。


実際の山岳としての「那智山」は、那智の大滝として有名な落差133メートルの水源となる大雲取山(966メートル)・烏帽子山(909メートル)・光ヶ峯(686メートル)・妙法山(749メートル)という自然林が拡がる山々の総称だが、この「那智山」は宗教組織として、神仏を混然一体として祀る一山組織の事を指す。


熊野本宮・熊野新宮・那智それぞれ別の宗教組織が一体となって活動を始める「熊野三山」の枠組みは、平安時代末の12世紀代に成立する。その一つ「那智山」は那智滝そのものを御神体として崇拝する飛瀧権現(千手観音)から始まり、やがてこれを核に那智十三所権現を第一殿から第六殿に分けて祀る社殿群、本地仏を祀る如意輪堂を中心とする青岸渡寺が設けられ、奥の院に相当する妙法山阿弥陀寺(那智滝が妙法山に登拝するための禊祓の地)と那智浜に面した浜之宮の補陀洛山寺の三者全体を管理運営する組織のことであり、全域を描いたのが江戸時代前期に成立した「那智参詣曼荼羅」である。


那智参詣というのは、那智浜で身体を浄めて浜之宮に手を合わせ、青岸渡寺で大滝に手を合わせ、滝壺の水で再び身体を浄めて妙法山に登り満願するものであった。


歴史上熊野参詣は15世紀代(室町時代)が最盛期で、山内には多数の宿坊が営まれた。果たしてこの中から長命寺は見つかるのだろうか。(山)