トップページ > 図書館だより・出版物> 伝えたい袋井のあゆみ> 第41回 熊野信仰と袋井5 海の熊野と袋井 

第41回 熊野信仰と袋井5 海の熊野と袋井

 

王子神社誕生


海の彼方から寄り来るカミのなかから、「王子神(おうじがみ)」として祀られるものがあらわれる。世界遺産に登録された大辺路(おおへち)・中辺路(なかへち)・小辺路(こへち)という熊野への参詣道沿いには「熊野九十九王子(つくもおうじ)」と呼ばれる多数の王子神を祀る藪や社、磐座が散在している。熊野詣とは、これら古道沿いの諸王子を巡拝しながら、熊野への苦行と滅罪の歩みを運ぶ道であることが独自の特徴とされる。


初回(2013年4月号)で紹介したように、山名荘が熊野山領であった関係で、袋井市域には多くの熊野系社寺が存在し、王子神を祀る社は多い。その代表が木原権現と浅羽地区の諸井・富里王子権現だ。これからしばらくのあいだ、この王子神の源流と袋井の関係を紹介してゆこう。


三重県熊野市にはイザナミノミコトの奥津城(おくつき・御霊の鎮まるところ)とされる、世界遺産「花の窟(はなのいわや)」がある。その歴史は古く『日本書紀』にすでに、ここがイザナミノミコトの奥津城で、「花の頃には花を以てまつるので、花の岩屋という」と記されている。現地を訪ねると海岸に突き出た丘陵先端が一枚の岩盤となっており、垂直に切り立った岩肌の裾に白い玉石が敷き詰められて区画をなし、それを祭壇としている。祠などの人工物は一切存在せず、圧倒的な存在感がある岩自体が「はなのいわや」という神霊の依り代である。


神仏の融合が進んだ鎌倉時代には「大般若の鼻」と仏教的な解釈もなされるが、「花」という言葉の意味は、丘陵先端の端=はし→はな→鼻→花(華)で鼻とは神霊が降下する時に目印となる岩の突起を指している。この窟の傍らには王子神の原型を知ることができる王子岩屋が存在している。(山)