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第33回 白山信仰と袋井21 袋井・浅羽からの白山巡礼10

 

水飲宿の釈迦誕生仏に別れを告げた遠州からの一行は、今日の宿泊地である別山室(べつさんむろ)に向かって、最後の難関である標高2128メートルの三ノ峰のピークを越すことになる。距離にするとわずか800メートルだが、この間に比高差200メートルを登らなければならない。


ようやくピークに立つと、眼前には幾筋にも刻まれた谷に残雪が斑に残る、厳しい表情の標高2399メートルの別山が立ちはだかる。「白山」とは単独の山の呼び名ではなく、最高点の御前峰(ごぜんがみね)・大汝峰(おおなんじのみね)と、少し離れたところにある別山との総称である。いずれも山の神が降り立つ聖地で、別山は虚空蔵菩薩(こくぞうぼさつ)の化身とされている。


美濃長滝寺や石徹白集落からは白山山頂の御前峰は見えず、この別山が美濃側にとっては白山の代名詞となる山で、長滝寺の詰所である「別山室」が置かれ、常駐の僧侶や山伏がいて白山牛玉宝印(はくさんごおうほういん)という祈祷札を護摩で炙って生を入れ、参詣者に配札する重要な拠点でもあった。


山頂では水が確保できないので、手前の雪解け水によってできた御手洗池(みたらいいけ)の傍らに宿坊となる大規模な山小屋、室(むろ)が営まれている。昔の室は廻りに石垣を積み上げ雪除け、風除けにしたもので今も一部で石積みが残っている。(山)