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第31回 白山信仰と袋井19 袋井・浅羽からの白山巡礼8

 

母御石(ははごいし)から先の稜線上を通る禅定道(ぜんじょうどう)は、森林限界を超えるので樹木はなく、晴れると厳しい陽射しが、荒れると谷底から吹き上がる強風が直接身体に当たる厳しい難路だ。しかし穏やかな日は稜線からの景色は素晴らしく、大自然の雄大さに、しばし我を忘れさせてくれる。


銚子ヶ峰のピーク(1810メートル)、一ノ峰のピーク(1839メートル)、二ノ峰のピーク(1962メートル)という三つの山とその間の鞍部をこえること2時間で、次の参籠所(さんろうじょ)の「水飲み宿」(1920メートル)に着く。そこは標高2128メートルの三ノ峰との鞍部で、一番低くなったところから雪解け水が湧出している。これは、山中での貴重な水源となるので江戸時代初期までは、美濃馬場長滝寺(みのばんばながたきでら)の山伏達の籠堂(こもりどう)の置かれた場所だった。祠には金銅製の釈迦誕生仏が祀られている。遠州からの一行は、先達の指導で御開帳させてもらい、社前で勤行を済ませると、しばしの休息となった。


釈迦誕生仏は像高が45センチで元禄4(1691)年に制作されここに納められている。台座には「白山水飲本尊願主心殊真宝上座 施主尾州春日井郡蓮花寺村鈴木次右衛門心鏡浄安信士 総伝妙善信女 遠州 三州 尾州 濃州 越州 右 五ヶ国 為 有縁 京堀川住筑後大掾常昧作 元禄四辛未年十一月日」と刻まれており、現在の愛知県春日井市に居た故鈴木夫婦の、追善供養(ついぜんくよう・亡くなった人の冥福を祈り、故人になりかわって供養のために仏像や仏具、堂塔を作って納めること)のために、遠江をはじめ白山に参詣する多くの人々の寄付で、この仏像が納められたことがわかる。(山)