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第30回 白山信仰と袋井18 袋井・浅羽からの白山巡礼7

 

朝食が済むと、標高1000メートルを越える高山に朝日がまぶしく照りつける時間となっていた。目前には目通り14メートル、高さ24メートルにもおよぶ杉の大木(現在は石徹白大杉と呼ばれ、樹齢1800年とされる)をはじめとして、あたり一帯は杉の巨樹に覆われ、圧倒されるような神々しい霊気がみなぎる。


ここは今清水宿という、山伏達の籠堂(こもりどう)がある聖地で、周辺に神が宿るご神木の杉を植え、人工的に造った杜を守り続けてきた場所だ。


御師(おし)に導かれた一行は、祠に祀られている、山王(さんのう)さまと呼ばれる地蔵菩薩像を礼拝して勤行し、奥の「熊清水」と名づけられた水源で、竹筒の水筒に水を満たすと、本格的な禅定道をひたすら登る。


ブナの原生林に覆われた尾根筋に設けられた禅定道は、急な箇所もあるが、緩やかで、足元は腐食土を踏むので心地よく、太陽も遮り自然と一行のスピードは上がる。


2時間ほど進むと、神鳩宿(かんばとしゅく)という、籠堂に着く。ここには薬師如来像が祀られ、御師の先達で勤行を済ませると小休止を取る。宿を出て細い尾根筋を登れば辺り一面が開け植生が一変する。標高1700メートルを越えて森林限界を迎えた一面は笹原となり、白山開山の泰澄大師(たいちょうだいし)の母が女人禁制を犯して登るので大師が法力を使い、母を閉じ込めたという母御石(ははごいし)へと到着。ここには視界を遮るものはなく、北には白山山頂を構成する別山などの山並みが、東には日本海、南には石徹白郷はもちろん、美濃が一望でき、思わず歓喜の声をあげてしまうほどだ。(山)