東海地方からの参詣者が白山へ参拝するために利用した美濃禅定道(みのぜんじょうどう)は、美濃馬場(みのばんば)と呼ばれた宗教都市、長滝寺の大門から始まる。
大門から真っ直ぐに延びた参道の突き当たりにはどっしりとした長い拝殿があり、そのうしろには白山権現の社殿が5棟並んでいる。右から若宮・別山(べつさん)・白山大御前(おおごぜん)・大南智(おおなむち)・大将軍(だいしょうぐん)で、このうち左端の大将軍社は、老朽化して造り替えるときには室町時代から代々、遠江の人々がその財源を負担しており、遠江とはつながりの深い社殿だった。
「表指し(おもてさし)」という美濃禅定道のルートを選んだ参詣者は、寺坊や寺内町を抜けて、長良川の渓谷に沿って2キロほど進むと、道は左に大きく振れて前谷川の谷を遡ることになる。
ここからの道はだんだんと急になり、美濃国(岐阜県)と越前国(福井県)の国境をなす標高990メートルの檜谷峠まで一気に450メートル分登ることになるが、いったん横道にそれて、霊瀑阿弥陀ヶ滝を参詣するのが習いだ。
この滝は美濃馬場長滝寺という名称の根源となったもので、落差60メートルの規模と水量の豊富な滝は見る者を厳かな気持ちにさせる。
阿弥陀ヶ滝は白山を開いた泰澄(たいちょう)が722(養老6)年にこれを発見して「長滝」と名づけ、下流に長滝寺を開いたと伝えている。(山)